こんにちは、しょう(@syo5_maint)です。
機械式立体駐車場の保守メンテナンス費用を削減する系の話題になると、必ず次の4つのワードが出てきますよね?
今回はその中でも「POG契約とフルメンテナンス契約」について解説したいと思います。
「独立系とメーカー系」については以前書いた記事で簡単に説明していますので、気になる方は読んでみて下さい。
すでにWeb上でこれらの情報がありますが、これらの殆どが管理会社もしくは業者側の立場での意見が多いです。
なのでこの記事では「もしも私が、マンションの理事会役員や駐車場経営者だとすれば」という視点から意見や考えをお伝えしたいと思います。
ちなみに会社での経験ではありますが、今まで複数の立体駐車場を所有管理をしてきました。
そのとき真剣に検討した結果も同じ答えですので「もしも私が」というよりかは実際にやってきた内容に近い意見になると思います。
機械式駐車場に20年以上携わるプロが自身の物件だった場合は、どのような判断や考え方をするのかをお伝えしますので、少しでも参考にして頂ければ嬉しいです。
POG契約とフルメンテナンス契約の違いとは?
エレベーターの保守メンテナンスで良く使われている契約種別です。
私がこの業界に入った30年ぐらい前はこの「POG、フルメンテナンス」という言葉は駐車場業界ではあまり使われていなかったと思います。
エレベーターの保守業界で使われていた言葉が徐々に駐車場業界の保守にも使われるようになったように思います。
エレベーターの保守業界でも機械式立体駐車場業界でも「POG契約とフルメンテナンス契約」の契約内容や意味合いは殆ど同じです。
POGとフルメンテナンスについて難しいことは省略して、わかりやすいように簡単に説明いたします。
POG契約「パーツ(Parts)、オイル(OIL)、グリース(Grease)」
パーツ、オイル、グリースを略してPOGと言います。
パーツつまり部品の調整及び点検を行い、オイルとグリースなどの潤滑油を補充・充填をする保守点検契約となっています。
要するに普通に保守点検を行うという事です。
異常や故障がないのかを点検することを目的とした保守点検ですので、異常箇所や故障した部品があれば修理に別途費用が必要となる契約です。
POGとか横文字で難しく感じますが「普通の保守点検」の事です。
FM契約「フル・メンテナンス(Full Maintenance)」
フルメンテナンスとは、POG「普通の保守点検」に加えて故障時の部品交換費用や経年劣化による部品交換及び工事費用がセットになった契約となっています。
企業によって若干サービス内容に違いはありますが、概ね(事故や災害)を除いた故障トラブルに関してはカバーされていますので、突発的な故障でも支払額が増えることがありません。
すごく簡単に言うとPOG(普通の保守点検)に加えて何か問題が発生した時でも無償で対応してくれる契約と言う認識で大丈夫です。
細かい事を言えば全てではありませんが、各種保険等などを含めていくと殆ど突発的な出費はなくなると思います。
普通に考えればあたりまえの事ですがPOG契約と比べると費用は高くなります。
POGとフルメンテナンスではどっちがお得なのか?
POG契約とフルメンテナンス契約について簡単に説明してきましたが、次に気になるのは実際はどっちがお得でオススメなのか?だと思います。
「損か得」について考えると状況や物の考え方によって判断が分かれますし、結果論でいくとどっちが得になるかは未来になって初めて分かるものです。
医療保険についての考え方とよく似ていると思います。
何回も入退院を繰り返せば加入している方がメリットがあるはずです。
逆に健康で入院など全くしなければ加入していても請求すること無く金銭的には損した事になりますよね。
これに良く似ていて、フルメンテナンス契約に加入するのは掛け捨ての医療保険に加入する感覚に近いような感じがします。
それで「私だったらどうするのか?」
答えは決まっています。
ちなみに「医療保険」も加入しないタイプです。
理由については沢山ありますが代表的なものが次の4つ
- 基本的に割高になる
- 改修工事の値段交渉が不可
- 他のメンテナンス会社に変更しにくい
- 改修費の積立要素もあり倒産リスクがある
順番にサクッと解説します。
基本的に割高になる
殆どの場合で最終的支払額は割高になります。
フルメンテナンスには今後予想される改修工事や部品費用などの合計額を全て加算してそれを規定の期間に分散する用に計算されています。
また突発的に発生する故障などの平均を加え、さらに一定の利益係数を掛けて算出されます。
つまり平均的に利益係数を掛けた分については確実に割高となります。
改修工事の値段交渉が不可
基本的に割高の続きになりますが、改修工事の値引き交渉が出来ません。
フルメンテナンスの場合は予想される改修工事について事前に毎月積み立てていくような感じになっていますので、改修工事についても無料で行われているように感じます。
ですがよく考えてください。
事前に積み立てているので無料ではありません。
さらにメンテナンス会社の言い値で試算されて、支払期間で分散されているだけです。
POG契約の場合は、改修工事が必要となった場合は別途工事に関する見積書が提出されます。
この場合他社との相見積もりを取ったりし値引き交渉を行うことが出来ますが、フルメンテナンスでは既に言い値で支払い済みですので交渉の余地はありません。
他のメンテナンス会社に変更しにくい
先程説明した通り
フルメンテナンス契約では今後必要となる改修工事や部品などの費用を積み立てていくような感じのシステムになってますが、実際の契約上では積立を行っているわけではありません。
つまり途中で解約した場合は「今まで支払い積み立ててきた費用」を破棄する事に近い状態に陥ります。
改修費の積立要素もあり倒産リスクがある
大手だからと言って絶対に安心ではありません。
例えば
来年予定しているワイヤー交換とモーター交換工事がある場合でも
フルメンテナンス契約だからが追加費用は必要ないと安心していても
そのメンテナンス会社が倒産した場合は全額実費で支払わなければいけません。
大手のメーカー系であれば「倒産」の可能性は低いかもしれません。
ですが最近は業界からの撤退や業務の譲渡または合併など行われているメーカーが沢山ありますので気をつけないといけません。
これらの理由によって
私だったらフルメンテナンス契約はしないで、選択肢はPOG契約一本です。
将来に渡って自由選択できる権利に制限がかかってしまうのが最大の理由ですね。
独立系のフルメンテナンス契約はリスクが高いのでやめましょう
フルメンテナンスを選ばない理由でもお伝えした通り「メンテナンス会社の倒産リスク」という物があります。
メーカー系のメンテナンス会社の場合は、グループに製造メーカーなど大手が付いているのでまだ安心出来ますが、独立系の場合はそうはいきません。
そもそも新設物件のメンテナンスを受ける機会が少ない独立系のメンテナンス会社ではフルメンテナンス自体を受けている所が少ないです。
フルメンテナンスを受けていても小さな独立系の会社の場合はPOG契約の方が賢明だと思います。
フルメンテナンス契約からPOG契約に切替時の注意点
フルメンテナンス契約からPOG契約に変更する場合
今までフルメンテナンス契約で支払ってきた追加費用は無駄になってしまします。
また、殆どの場合は新設後間もない時でないとフルメンテナンス契約を結ぶことが出来ません。
つまりPOG契約に一度変更すると元のフルメンテナンス契約に戻れないことになります。
今まで長期に渡りフルメンテナンス契約を行ってきた場合や近々大きな改修工事が予想される場合などは、POG契約に変更するとマイナス要素がとても大きいので慎重に考える必要があります。
大きな改修工事が終えるまで待つなど、タイミングを考えながら契約変更時期を考える必要がありますね。
管理会社やメンテナンス会社に相談してはダメ!
さて
ここまで機械式立体駐車場のメンテナンスの「POG契約とフルメンテナンス契約」について解説をしてきましたが、専門要素が多く難しいので「管理会社かメンテナンス会社」に相談してみようと思った方はちょっと待って下さいね。
管理会社やメンテナンス会社に「条件や意見」を聞くのは良いと思いますが「相談や判断を任せる」のはやめましょう!
会社相手ですので「依頼者の利益より自社の利益」を取られた場合のリスクももちろんありますが、それだけの問題ではありません。
管理会社やメンテナンス会社の担当者によって違いはありますが、あなたにとって最善の選択を提案してくれる場合であっても判断を任せないでほしい
この記事を最後まで読んでくださったあなたには、最後はご自身でしっかりとした判断をしてほしいと思います。
契約内容を選択したり変更する場合、今後長期に渡って影響を与えます。また一度選択すると元に戻せないなどの制限もある為、後悔しないように人任せにせずしっかりと自身で判断してほしいと思います。
さいごに
立体駐車場のメンテナンスに関して「POG契約とフルメンテナンス契約」の解説をしてきましたが、如何でしょうか?
どっちが良いのか賛否両論あると思いますが「もしも私が選択するのなら」という内容でお送りいたしました。
迷っている方や悩んでいる方にとって、少しでも参考にして頂ければ嬉しく思います。
コメント
読ませていただきました。
分譲マンションの立体駐車場ですが、基板の取替等で1ヶ所修繕する度に100万円かかります。現在も2ヶ所で220万円の修繕が行われようとしています。
故障しやすい基板を使わない方法があると制御に詳しい住人の方に聞きましたが、その方法はメンテナンス会社から拒否されています。修繕費用をこれまでにも多大に支払っています。仕方がないのでしょうか。
コメント頂きありがとうございます。
基盤の取替で100万円とは、かなり高額な改修工事ですね。
どのような装置かわかりませんが、大がかりな取替なのでしょうか?
制御に詳しい方が近くにいらっしゃるようですので、その方にご相談してみてはどうでしょうか?
どのような制御を行っているかわからないので、なんとも言えませんが、色々対策を考えるのは良い事です。
例えば
エレベーターの制御基板などは、メーカー独自基盤なので高額でも諦めガチですが
汎用品のPLCなどに置き換え対策されているマンションもあります。
制御に詳しい方やメンテナンススタッフの意見を聞いて
納得できる方法を見つけてみて下さい。